透析体験者のストーリー

SAさんの場合
「一日一日の大切さを実感しながら」

患者様のご家族から頂きました貴重なお手紙をご紹介いたします。親御さんが透析医療を受けておられる一人の女性が、透析を始めておられた男性と運命的な出会いを経て結婚を決意され、この 15 年の間透析生活を支えてこられました。

どんな夫婦や家族にも、何かしら問題を抱えているものですが、それが透析という問題だったとしたら・・・。

日々の暮らしの中にさりげない工夫を凝らし、常に前向きに過ごしておられるお二人のすばらしい信頼関係に感銘をうけると同時に、大いに学ぶところがあると思います。

“プロローグ”

付き合う前から夫はすでに透析をしていました。おまけに難聴と歩行障害。彼はその体を抱えながらも私の周囲の誰よりもエネルギーがあり、精一杯生きている人でした。特に彼が教えてくれた統計学の授業はピカイチでした。今でもそうですが、とても眩しい存在として目に映ったのです。

“出会い ”

看護の道を目指し看護学生として学校に通っていたころ、彼に出会いました。非常勤講師として私の学校で教鞭をとっており、その授業でファンになりました。卒業までに二人で話しをした時間は、三時間ほどだったでしょうか。その後、夫が福山に転勤になり、はがきでのやりとりが数回ありました。そんなある日の手紙に釣書きとプロポーズの言葉が添えられていました。

プロポーズされてから、付き合いがはじまったのです。私が看護学校を卒業してすぐのことだったので、これから先のことも考え3年間は看護師としての仕事を続けさせて欲しいと頼みました。夫はそれを承諾してくれました。

今年で結婚15年を迎えます。少し大袈裟な表現をすると夫の命と向き合った生活を送っています。それだけに夜中静かな寝息の夫を見ると、生きていてくれているありがたさをしみじみと感じます。一日の尊さと重さを夫が教えてくれているようなものです。この人を丸ごと受け止めようと自然と思わせてくれます。

“日々の工夫 ”

私の役目は主に二つ。夫の足代わりと家事です。 ( 家計は夫が担っています ) どちらも苦にならないので負担に思ったことはありません。暮らしの中での配慮していることをいくつか挙げますと、
 ・家具を手すり代わりになるよう配置を工夫している
 ・指輪をしない
 ・夫の首に就寝時タオルを巻く
 ・低リン低カリウム米、透析患者さん用のドリンクの摂取
 ・天然活性水素のミネラル水の飲用
 ・生活便利商品に関する情報の収集
 ・数年先の夫の体を考慮し購入する車を選ぶ
 ・車中に救急箱・下着・オムツを常備している
 ・なるべく室温の差が大きくならないようオイルヒーターや温風器を活用して温度調節をするなどです。

“大切な食事管理”

知り合いもない福山で夫を支える生活に、不安がなかったわけではありません。特に食事には気を使いました。

一緒になって一年余りの間、食事をノートに書いて血液検査結果と照らし合わせ、自分なりのだいたいの調整の仕方を身に付けました。その際、病院から頂いたプリント類や購入した食品成分表などを参考にしました。不足しがちな栄養素を含んだ食品を紙に書き出し、台所に貼って積極的に食事に加えるようにしています。また、夫の嗜好品や、より摂取したい栄養素のために、低リン低カリウム米を活用しています。夫は、お刺身や生の果物が好物なので、低リン低カリウム米で減らせた分そちらに回して、好きなものを食べられるよう工夫しています。ただ、几帳面な性格ではないので、時々は出来合いの物を買うなど、手を抜くこともあります。

我が家での最大の問題は、私が入院した際、誰が夫の面倒をみるかです。二人っきりなうえ近くに住んでいる身内もおりません。その解決が今の課題でしょうか。その他では夫が体調悪化時、仕事に支障を来たすのを恐れて、受診の勧めに応じてくれない事です。私に関して申しますと、身体的な疲労はほとんどありませんが、精神的なそれは正直常時あります。心を軽く圧迫されているような感があり、夫の具合次第では私まで引き摺られ、ひどく落ち込んでしまうこともしばしばです。

“エピローグ ”

花の移ろいと共に、季節は巡り透析開始から17年を越えました。あと何回共に並んで桜の花を眺める事ができるでしょう。この生活の中で成長しながら「一緒になって良かった」と言ってもらえるよう悔いの無い日々を彼の側にいて重ねていこうと思います。

■編集後記
SAさんから原稿を頂いた時、ご夫婦の支えあう姿が私の胸を熱くしました。透析患者を支える家族としての視点で原稿を依頼した私でしたが、それ以上のものを返していただいたような気がします。
頂いた原稿に手紙がそえられていました。その中にこんな控えめで心温まる文章がありました。

「私達は普通の夫婦です。透析をしている。障害がある夫と暮らしている。これは生活の中の一部分に過ぎず、そんなに苦労でも大変なことでもないし、皆に褒められような事でもありません。一般の夫婦のようにお互い人間同志気持ちよく付き合って生活していけるかということに重心を置いた暮らしをしています。」

ご夫妻の深い信頼と、積み重ねてこられた歳月のゆるぎなさを実感しました。
最後になりましたが、SA様ご夫妻のご協力に心から感謝いたします。ありがとうございました。

(腎友会 会報誌より)

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